ダウンブローは打てないといけないのか



アイアン

ダウンブローという言葉を皆さん1度は聞いたことがおありでしょう。
簡単にいえば、スイングの軌道が一番下に来る前にボールを打つ、というスイングなんですが、このスイングについての記事を見てみると、とにかくダウンブローに打てないとダメだから打てるようになりましょう、という論調がほとんどです。
しかし、本当にそうなのでしょうか?別に当たればなんでも良いのでは?
今回はそんなダウンブローについて、ちょっと違った切り口でご紹介したいと思います。

そもそもなぜダウンブローなのか

ちょっと考えてみましょう。ミドルアイアンやフェアウェイウッドでダウンブローで打て、という記述はあまりみかけません。だったらショートアイアンも同じように打てば良いはず。ロフトが立って飛ぶから、といった記述も良く見かけますが、だったら最初から番手を上げれば済む話です。
では、どうして?
実は元々はクラブの製造上の制約が大きく関係しているのです。

・マッスルバックの昔のアイアンは芯の位置が高い
元々アイアンはキャビティなどではなく、マッスルバックと呼ばれる一塊の鉄でできたものがほとんどでした。
打感の問題や、微妙にフェードやドローを打ち分けることができると言った理由で今でもプロアマ問わず愛用しているゴルファーは多くいます。
さて、アイアンを作る場合ですがクラブのスイングバランスはセットで揃えなくてはいけません。
バランスは、重さと長さで決まります。長さが長いものは先端を軽く、長さが短いものは先端を重くしないと全体のバランスは揃いません。
昔の製造技術では、重さを軽くするには小さくするしか方法がありませんでしたので、長いクラブと短いクラブのヘッドは大きさが、かなり違ってきます。
さて、クラブの真の位置はヘッドの形状大きさで、ほぼ決まります。
まして昔は重心位置を変えるために異素材を組み合わせるなどの技術がありませんでしたのでミドルアイアンやロングアイアンは芯の位置が地面に近く、ショートアイアンは地面から高くなっていました。
芯の位置がボールの中心点に近ければ、普通に打てば芯に当たりますが、芯の位置が高くなってくると調整が必要になります。そのためショートアイアンは芯に当てるためには少しクラブが被った状態でボールに当てる必要が出てくるのです。
こういった必要性からショートアイアンはダウンブローで打つことが常識になっていました。

・低重心であれば必ずしもダウンブローで打つ必要はない
クラブの製造技術が発達して、いろいろな素材が使えるようになり重量の配分も比較的自由になってくると、初心者初級者向けに低重心のアイアンが開発されるようになりました。
こういったアイアンは、レベルブローで打ってもも芯に当たるように重量が配分されていますので、ことさら意識しなくてもきちんとした距離が出ます。

ダウンブローに打てない飛ばない、は本当か?

これはハイともイイエとも言えます。
ちょっと逆説的な言い方になりますが、「ダウンブローに打てないから飛ばない」ではなく「飛ばないようなスイングだからダウンブローにならない」と言ったほうが正確でしょう。
上級者やプロのスイングをスローで見てみると、インパクトのギリギリまで手首がコックされた状態なのがわかると思います。
一方、初心者、飛ばない方のスイングは右腰くらいの位置ですでにコックがほどけてしまっています。
コックが早くほどけてしまうとボールに対してヘッドが鋭角に入る軌道にはなりません。
ですので、ボールを右に置いた場合ダフってしまいますし、ダフらないようにしようとすると体重を右に残してしゃくるように打つしか無くなってしまいます。

それでもダウンブローのメリットはある

低重心のアイアンを使って、普通に振っても芯に当たるとしてもダウンブローのメリットというのはあります。

ひとつはスピン。ダウンブローのほうが当然バックスピン量は増えてきます。
しかし、プロのようにグリーンで戻るようなボールを打つには相応のヘッドスピードが必要ですし、最近のボールはスピンがあまりかからないものが主流です。
バックスピンが多くかかるボールは、言うまでもなくサイドスピンも多くかかりますのでボールが曲がります。スピン量の多いボールを使うのは、曲がる危険も増えるということを知っておく必要があります。

もうひとつがライが悪い時、です。スイングの最下点で打つスイングの場合芝が薄いとヘッドがわずかに上下にズレただけで、結果が極端に悪くなります。すぐにダフりになったり少しトップ気味に入るとゴロになってしまったりします。
ダウンブローであれば、ハーフトップ気味に薄く入ったとしてもヘッドは下に動いている最中ですのでボールがフェースに乗って、そこそこのボールが打てます。
いろいろなライに対する許容度の大きさはダウンブローの大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ

前述したように、正しいスイングそのものができていないのにダウンブローを考えるのは少し無理があります。
もちろんできるに越したことはありませんが、きちんと芯でボールを打つことができればダウンブローで打てなくとも十分スコアになります。
一番良くないのは、正しいスイングの構造を理解せずにダウンブローという言葉だけを盲信してしまい、上から叩きにいくような意識をもってしまうことです。こうなるとスイングそのものがバラバラになってしまいます。
スイングを考える時は、ひとつひとつの細かい現象だけでなくスイング全体を常に意識するようにしたいものです。

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